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東京地方裁判所 昭和45年(むのイ)1175号 決定 1970年6月23日

主文

本件各準抗告をいずれも棄却する。

理由

一、本件各準抗告の趣旨および理由は、別紙(一)、(二)各準抗告申立書写し記載のとおりであるから、これらを引用する。

二、当裁判所の判断

(一)  まず、接見禁止の裁判の当否について判断するに、一件記録によると、本件は全臨時労働者組合所属の組合員多数がデモ行進の解散地から逆流し、組合員を解雇した読売新聞北王子出張所店舗に被疑者らの指揮のもとに、右解雇処分の撤回を求めて夜間大挙して押しかけ、途中、警備の警察官に暴行を加えてその制止を排し、右出張所に至るや入口ガラス戸のガラスを損壊して店内に侵入したという危険かつ悪質な集団暴力事犯であって、かかる事犯の特質・態様、本件における被疑者の指導的立場、捜査官に対する供述態度等諸般の事情を総合勘案すると、捜査の現段階においては、罪証隠滅のおそれが顕著であって(原裁判は逃亡のおそれを勾留ならびに接見禁止の理由とはしていないので、この点を準抗告の理由としている弁護人の主張は失当である。)被疑者との接見を禁止した原裁判は相当であり、この点に関する弁護人の主張は理由がなく、準抗告は棄却は免れない。

(二)  次に、勾留場所の指定の点について判断するに、一件記録によると、昭和四五年六月二一日東京地方裁判所裁判官により勾留場所を代用監獄尾久警察署留置場とする被疑者に対する勾留の裁判がなされたことが認められる。

ところで、監獄法一条の趣旨に鑑みると、勾留場所は原則として拘置監たる監獄とすべきものであって、これを代用監獄たる警察署付属の留置場とするのはやむを得ない例外的な場合に限られるべきことはいうまでもないが、一件記録によると、本件被疑事件は夜間における多数の者の共謀犯行であって、被疑者はその指導的立場にあったものであるところ、現在、被疑者は犯行を否認しており、また、共犯者の供述も未だ得られない状況にあって、今後捜査機関において目撃者、関係人と被疑者との面通しまたは対質取調べの行われることが必至であることが認められる。しかして、かかる捜査の迅速な遂行の困難な東京拘置所における人的物的施設の現状においては、前記の如き本件事案の特質、態様、その重大性に鑑み、原裁判が被疑者の勾留場所を代用監獄とした措置はまことにやむを得ないものといわなければならない。

従って、この点に関する弁護人の主張も理由がなく、準抗告は棄却を免れない。

三、よって、本件各準抗告はいずれもこれを棄却することとし、刑訴法四三二条、四二六条一項を各適用して主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 守谷芳 裁判官 吉永忠 小田部米彦)

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